人体の構造と機能 第40回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
(3)気管・肺
《構造》
A)気管
・気管は喉頭につながり、左右に分岐するまでの10~12cmの管状器官です。
・気管の前には甲状腺があって、後ろには食道があります。
B)気管支
・気管が左右に分かれた後、さらに枝分かれした部分を気管支と言います。
補)最初に分かれた気管支は主気管支、その後分かれていくものを順に、葉気管支、区域気管支、気管支枝、小葉間細気管支、終末細気管支、呼吸細気管支と言い、さらに肺胞管、肺胞嚢、肺胞となります。
[設問] 気管支の分岐の順番で正しいものを選べ。
イ 主気管支→区域気管支→葉気管支→気管支枝→小葉間細気管支→呼吸細気管支→終末細気管支
ロ 主気管支→葉気管支→区域気管支→気管支枝→小葉間細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支
ハ 主気管支→葉気管支→区域気管支→小葉間細気管支→気管支枝→終末細気管支→呼吸細気管支
ニ 主気管支→区域気管支→葉気管支→小葉間細気管支→気管支枝→呼吸細気管支→終末細気管支
正解 (ロ)
・左主気管支は、食道と胸部大動脈の前で、これらと交叉します。
C)気管支分岐角度の左右差
・気管から気管支への分岐の角度は、成人では右が約25度、左が約45度で、異物は右の主気管支へ入りやすくなっています。
D)縦隔(じゅうかく)
・左右の肺にはさまれた領域は縦隔と呼ばれ、ここは、心臓、心臓に出入りする血管、食道とともに気管、気管支が存在する領域でもあります。
人体の構造と機能 第39回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
(2)咽頭・喉頭
《構造》
A)咽頭
・咽頭は、後鼻孔から喉頭口までの約12cmの管です。
・咽頭は、上咽頭、中咽頭、下咽頭に区別されます。
・咽頭には、咽頭扁桃、口蓋扁桃、耳管扁桃などがあって、ワルダイヤーの扁桃輪を形成しています。
B)喉頭
・喉頭は、上は下咽頭につながり、下は気管につながっています。
・喉頭の入り口には喉頭蓋(こうとうがい)があって、誤えんを防いでいます。
・喉頭の後ろには食道が通っています。
・喉頭は、喉頭蓋軟骨、甲状軟骨、輪状軟骨、披裂(ひれつ)軟骨からなるものです。
・喉頭の内側には、発生を司る声帯があります。
《機能と生理》
A)咽頭の役割
・咽頭は食物と空気の通路の役割、発声の共鳴器として働いています。
B)喉頭の役割
・喉頭には、吸気と呼気の通り道(気道)としての機能と発声器官としての機能があります。
人体の構造と機能 第38回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
2)呼吸器系器官の構造と機能
(1)鼻腔
《構造》
A)鼻腔
・鼻腔の入り口は外鼻孔であり、後鼻孔で咽頭につながっています。
・鼻腔内は上鼻道、中鼻道、下鼻道に分かれています。
・外鼻孔の入り口付近は、鼻前庭といい鼻毛が生えています。
B)副鼻腔
・副鼻腔は頭蓋骨の内部にある空洞で、その表面を覆う粘膜は鼻腔粘膜につながっています。
・副鼻腔には、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、腸脛骨洞があります。
《機能と生理》
A)鼻腔の役割
・鼻腔は吸気と呼気の通り道です。
・鼻腔内にある鼻毛、粘膜より分泌される粘液、粘膜上皮の繊毛などによって吸気中の異物を除去するとともに、温度の調整と湿度の調整も行っています。
B)副鼻腔の役割
・副鼻腔は、発声の時の共鳴腔の役割も果たしています。
人体の構造と機能 第37回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
7.呼吸器系の構造と機能
1)概念
・細胞が生命活動を維持するためには、エネルギーの産生が不可欠です。エネルギー産生系としては、ミトコンドリア内のTCA回路、電子伝達系・酸化的リン酸化といった酸素を使った系の維持が必要となります。そのための酸素の供給、代謝産物としての二酸化炭素の排泄を可能としているのが呼吸器系です。
・呼吸器系は、鼻腔、咽頭、喉頭までの上気道と、気管から末梢の下気道と肺胞で構成されています。
人体の構造と機能 第36回(心臓・血管系〔循環器系〕の構造と機能) [人体の構造と機能]
E)脈拍
・脈拍は、身体のいくつかの場所で触知できます。
F)毛細血管の役割
・網目状に分布する毛細血管の壁は薄く(組織の細胞と物質のやり取りをするためです)、内皮細胞だけでできています。血管内から、白血球や血漿も内皮細胞の間隙から出入りすることができ、ガス交換や栄養素、老廃物のやり取りをしています。
(3)リンパ系
《構造》
A)リンパ管とリンパ節
・リンパ管とリンパ節からなるのが、リンパ系です。
B)リンパ管
・リンパ管は静脈に類似した管で、管壁は薄くて、逆流防止のために弁があります。
・リンパ管より細い毛細リンパ管は、扁平な内皮細胞だけでできています。
・下半身と左上半身のリンパ管は、途中リンパ節につながりながら、最終的には胸管(きょうかん)となり、左鎖骨下静脈につながっていきます。胸管の起始部は第2腰椎にあって乳び槽と言われます。
・右上半身のリンパ管は、途中リンパ節につながりながら、最終的には右リンパ本管となって、右鎖骨下静脈へとつながることになります。
・リンパ液の成分は、リンパ漿とリンパ球で、血漿よりも蛋白質の量が少なくなっています。
C)リンパ節
・リンパ節は、腋窩やそけい部、頸部に多く分布しています。リンパ節には、リンパ球と貪食細胞が存在します。
《機能と生理》
・リンパ系は、生体防護のための免疫反応を行っています。
・リンパ系のリンパ球は、リンパ管に入ってきた病原体の抗原に対する抗体の産生を行っています。
・リンパ節では、細菌などの異物を貪食細胞が貪食して、抗原を露出させ、リンパ球がそれに対する抗体を産生することになります。
[設問] 胸管を経ずに鎖骨下静脈につながるのは、次のどこからのリンパ管か?
イ 右上半身 ロ 左上半身 ハ 右下半身 ニ 左下半身
正解 (イ)
以上で循環器系は終了です。次回からは、呼吸器系となります。
人体の構造と機能 第35回(心臓・血管系〔循環器系〕の構造と機能) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)肺循環
・肺動脈は、静脈血を肺に送り、ガス交換(二酸化炭素を酸素に交換)を行います。
・肺静脈は、ガス交換後の動脈血を左心房に送ります。
・肺動脈圧は9~24mmHg(平均15mmHg)くらいです。
・肺動脈の血流速度は40cm/秒で、肺尖部で遅く、肺底部で速くなります。
B)体循環
・動脈系は、全身に動脈血を送り、全身臓器でガス交換(酸素を二酸化炭素と交換)を行っています。また、栄養素を含めその他の物質を運搬しています。
・静脈系は、ガス交換後の静脈血を右心房に送ります。
・成人における循環血液量は、体重の7%です。
C)血圧
・血圧は循環する血液が血管壁に及ぼす圧力です。
・心臓が収縮し心室から血液を圧出する時の動脈中の血圧が収縮期(最大)血圧で、心臓が拡張し心房へ静脈血が流入する時の動脈中の血圧が拡張期(最小)血圧になります。
・収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧と言います。
・全身の血圧は、心臓の拍出量と血管運動によって保たれています。
D)血管運動の調節機構
・血管運動の調節機構には、神経性と内分泌性(液性)がある。
・血管運動の神経性調節は、自律神経によって行われていますが、中枢は延髄の血管運動中枢になります。
・交感神経から分泌されるノルアドレナリンは、交感神経のα受容体を刺激し、末梢血管を収縮させますが、骨格筋の動脈と冠動脈ではβ受容体が刺激されて血管は拡張し、骨格筋や心筋の活動の高まりを支えることになります。
・大動脈弓(だいどうみゃくきゅう)や頸動脈にある圧受容器が血圧の上昇を感知すると、血管は反射的に拡張します。これは迷走神経(副交感神経)反射です。
・大動脈や頸動脈にある化学受容器が血液中の二酸化炭素の増加や酸素の欠乏によって刺激されると、末梢血管は収縮します。
・血管運動の内分泌性調節に関与するのは、副腎髄質から出るアドレナリン、腎臓から出る酵素レニンによってつくられるアンギオテンシンI、アンギオテンシンII(レニン‐アンギオテンシン系)、下垂体後葉ホルモン(バゾプレシン)です。
人体の構造と機能 第34回(心臓・血管系〔循環器系〕の構造と機能) [人体の構造と機能]
(2)血管系
《構造》
A)血管の種類と大きさ
・血管には動脈、毛細血管、静脈があります。
・動脈は心臓から送りだされた血液を運ぶ血管で、大動脈で直径は3~4cm、細小動脈で直径は30~200μmほどです。
・毛細血管は、直径が5~10μmで、赤血球が通過できる太さです。
・静脈は、心臓に血液を運ぶ血管です。
B)血管壁の構造
・動脈の壁は、内膜、中膜、外膜の3層からなり、中膜は平滑筋細胞と弾性線維からできています。内膜は内皮細胞と結合組織からなり、外膜は結合組織でできています。弾性線維は太い動脈ほど多く、そのため弾性動脈とも言われます。
・毛細血管の壁は極めて薄く、内皮細胞だけでできている。
・静脈の壁も、内膜、中膜、外膜の3層構造ですが、動脈に比べ中膜が薄いのが特徴です。
C)肺循環と体循環
・血管系には、肺循環と体循環があります。
★下図は成人と胎児の肺循環と体循環です。違いを頭に入れてください。
人体の構造と機能 第33回(心臓・血管系〔循環器系〕の構造と機能) [人体の構造と機能]
C)心臓壁
・心臓の筋肉(心筋)は、骨格筋と同じ横紋筋ですが、不随意筋なのです。
・心臓には特殊な心筋細胞からなる刺激伝導系があります。
・心臓の内側は心内膜によって覆われ、外側は2重の心外膜によって覆われています。
D)心臓の血管
・心筋を灌流するのは、バルサルバ洞(大動脈起始部の膨大部)で分岐して心臓をとりまく、左右の冠動脈とその分枝です。
《機能と生理》
A)心臓の役割
・心臓は、全身に血液を循環させるポンプの役割を果たしています。
B)刺激伝導系
・心臓のポンプ機能は、刺激伝導系によって行われています。
・刺激伝導系は、洞房結節 → 房室結節 → 房室束(ヒス束) → 左脚、右脚 → プルキニエ線維からなっています。
・洞房結節(右心房上部にあります)は、歩調取り(ペースメーカー)となって、律動的な60~80/分のインパルスを発し、約0.22秒後に心臓全体に伝わります。
・心電図(ECG;electrocardiogram)で、P波は心房の興奮、QRS群は心室の脱分極(だつぶんきょく)、ST波とT波は心室の再分極(さいぶんきょく)を表しています。
C)心拍数(しんぱくすう)と心拍出量(しんはくしゅつりょう)
・心拍数とは、1分あたりの心臓の収縮頻度をいいます。
・心拍出量とは、心臓から送りだされる血液の量(特に左心室から大動脈を経て送りだされる血液量)をいいます。
D)心臓の調節
・心臓のポンプ機能は、交感神経と副交感神経(迷走神経)によって調節されていて、交感神経はノルアドレナリンの作用で心拍数と心拍出量を増加させ、副交感神経はアセチルコリンの作用で低下させます。
・心臓に流入する血液量が多いほど、心筋は強く引き伸ばされ、強い収縮が誘発されます。これを、スターリングの法則(効果)といいます。