人体の構造と機能 第100回(神経系) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)中枢神経系の機能
・感覚神経によって集まる刺激・情報を統合し、外界への対応を決定し、指令を末梢神経(運動神経)を介して端末の器官(主に骨格筋)へ送ります。また、身体の中にある器官の調節を自律神経を介して行っています。
B)大脳の機能
a)新皮質と大脳辺縁系
・大脳には、新皮質といわれる理性を司る脳が表面にあって、内部には大脳辺縁系といわれる情動の中枢があります。
b)主な5つの機能
・大脳の機能には、認識、運動のプログラムの作成・制御、意識、感情・情動、記憶・学習があります。
c)大脳の機能局在
・大脳には機能局在があって、前頭葉では、運動野は骨格筋の随意運動(体性運動神経系)の中枢、ブローカ野は運動性言語中枢(発語に関与)、前頭前野は物事の計画や判断を行う最高中枢を担っています。
・頭頂葉では、体性感覚野は体性感覚の中枢、頭頂連合野は体性感覚、視覚、聴覚情報を連結して処理する中枢です。
・後頭葉の視覚野は視覚の中枢、側頭葉の聴覚野は聴覚の中枢、頭頂葉と側頭葉にまたがるウエルニッケ野は感覚性言語中枢(言語の理解などに関与)である。
e)大脳の交叉支配
・片方の大脳半球は、大半の機能において、身体の反対側を支配しています。
・小脳との連携においても交叉があって、小脳と身体では同側支配となっています。
f)大脳辺縁系の機能
・情動、記憶などに関与しています。
・側頭葉深部にある海馬(かいば)は、記憶と学習の中枢で、記憶の元となる情報が入り、短期記憶に関与しています。
g)大脳基底核の機能
・大脳基底核は、錐体外路系(すいたいがいろけい)の中枢で、錐体路(体性運動野と皮質脊髄路などで構成)や小脳と協同で、円滑な運動の遂行に大きな役割を果たしています。
[設問] 側頭葉にあるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ ブローカ野 ロ 視覚野 ハ 聴覚野 ニ 体性感覚野
正解 (ハ)
[設問] 次の文で、正しいものを一つ選べ。
イ 右大脳半球はアナログ脳、左大脳半球はデジタル脳と言われる。
ロ 頭頂葉と側頭葉にまたがるウエルニッケ野は運動性言語中枢である。
ハ 左小脳は、身体の右側を支配している。
ニ 大脳基底核は、錐体路を構成する。 正解 (イ)
人体の構造と機能 第99回(神経系) [人体の構造と機能]
G)髄膜
・脳と脊髄は、外から硬膜、クモ膜、軟膜で被われています。
・硬膜は、強い結合識性の膜で、大脳半球を左右に分ける大脳鎌(だいのうかま)、小脳と大脳を隔てる小脳テント、小脳半球を左右に分ける小脳鎌をつくっています。
・クモ膜と軟膜の間には、脳脊髄液で満たされるクモ膜下腔があります。
F)脳室系と脳脊髄液
・脳の中には脳室があり、大脳半球内にある左右の側脳室、間脳の中心部にある第3脳室、橋にある第4脳室があります。それらは、連絡孔や中脳水道で連絡していて、脳脊髄液が流れています。
・脳脊髄液は、脳室系にある脈絡叢(みゃくらくそう)で産生され、脳室系から第4脳室の正中口と外側口からクモ膜下腔うに出て、大脳縦裂周囲のクモ膜顆粒から吸収されます。
G)脳の血管
・脳には、4本の動脈(左右の内頸動脈と椎骨動脈)が灌流しています。
・内頸動脈は、中大脳動脈、前大脳動脈に分かれ、大脳の前方部を灌流します。
・左右の椎骨動脈は、合流して脳底動脈となり、脳幹、小脳に分枝を送り、そのあと、左右の後大脳動脈に分かれ、後頭葉中心に大脳後方部を灌流します。
・内頸動脈系の動脈と椎骨動脈系の動脈は、脳底部の上部で、前交通動脈、後交通動脈を介してウイリスの動脈輪(どうみゃくりん)をつくっています。
[設問] 脳を覆う膜で外側から中に向かう順の正しいものを選べ。
イ 硬膜 → クモ膜 → 軟膜
ロ クモ膜 → 硬膜 → 軟膜
ハ 硬膜 → 軟膜 → クモ膜
ニ クモ膜 → 軟膜 → 硬膜 正解 (イ)
[設問] 大脳と小脳を隔てるものはどれか? 一つ選べ。
イ 大脳鎌
ロ 小脳鎌
ハ 小脳テント
ニ クモ膜 正解 (ハ)
[設問] 正中口と外側口があるのはどこか?
イ 側脳室 ロ 第3脳室 ハ 第4脳室 ニ 中脳水道
正解 (ハ)
[設問] ウイリスの動脈輪において、左右の脳循環を結ぶ動脈はどれか? 一つ選べ。
イ 前大脳動脈 ロ 前交通動脈 ハ 後交通動脈 ニ 中大脳動脈
正解 (ロ)
人体の構造と機能 第98回(神経系) [人体の構造と機能]
E)小脳
・小脳は、後頭蓋窩(こうずがいか)の脳幹の後ろにあって、上・中・下小脳脚とつながる。
・小脳は、細くなった中央部の虫部(ちゅうぶ)と左右に膨大した小脳半球からなるものです。
F)脊髄
・脊髄の始まりは、頭蓋骨の大後頭孔を出たところで、脊柱管内を通って、第1腰椎レベルで終わります。長さは40~45㎝です。
・脊髄は、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄からなっています。
・脊髄の横断面では、中央部に神経細胞の集まりである灰白質(かいはくしつ)、周辺部に神経線維が通る白質(はくしつ)があります。
・脊髄の灰白質には、前角(ぜんかく)、側角(そくかく)、後角(こうかく)があります。
・前角には、下位運動ニューロン(下位運動神経細胞)があり、側角には交感神経の節前ニューロンがあります。後角には、痛覚・温度覚の感覚神経細胞があります。
・脊髄には、運動神経が出る前根(ぜんこん)と感覚神経が入る後根(こうこん)があります。
・脊髄の白質は、前索(ぜんさく)、側索(そくさく)、後索(こうさく)に分けられます。
・前索には、前皮質脊髄路(錐体路、下行線維)、外側脊髄視床路(感覚系、上行線維)、前・後脊髄小脳路などがあります。
・後索には、薄束(はくそく)と楔状束(きつじょうそく)という感覚系の上行線維があります。内側が薄束、外側が楔状束です。
[設問] 小脳の中央部にあるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 小脳半球 ロ 小脳虫部 ハ 上小脳脚 ニ 中小脳脚
正解 (ロ)
[設問] 脊髄下端はどのレベルか?
イ 第12胸髄 ロ 第1腰髄 ハ 第3腰髄 ニ 第5腰髄
正解 (ロ)
[設問] 脊髄後索を通るのは次のどれか? 二つ選べ。
イ 錐体路 ロ 脊髄視床路 ハ 薄束 ニ 楔状束 ホ 脊髄小脳路
正解 (ハ、ニ)