人体の構造と機能 第45回(血液・造血器の構造と機能) [人体の構造と機能]
(2)白血球
《種類と構造》
A)白血球数
・白血球は、正常人では4000~10000/mm3の範囲にあります。
B)白血球の分類
・好中球(こうちゅうきゅう)、好酸球(こうさんきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、単球(たんきゅう)、リンパ球に大別されます。
・好中球は白血球の65~70%を、好酸球は3~5%を、好塩基球は0.5~1%、単球は約5%、リンパ球は約25%を占めています。単球は白血球中最大の細胞です。
《機能》
A)好中球と好酸球の役割
・好中球と好酸球は、細菌などの病原体を殺したり、貪食する機能を持っています。
B)好塩基球の役割
・好塩基球は、主にヒスタミンを生成して生体反応を高める機能を持っています。
C)単球の役割
・単球は血管から感染組織に浸潤してマクロファージに分化し、細菌や破壊された細胞の断片を貪食します。
D)リンパ球の役割
・リンパ球には、B細胞、T細胞、ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)があって、B細胞はウイルスやその他の外来物質を抗原として抗体を産生します。T細胞はウイルスに感染した細胞を認識して殺したり、リンホカインやサイトカインと呼ばれる物質を産生して、他の白血球の働きを高める作用を持っています。NK細胞は、ウイルスに感染した細胞やガン化した細胞を見つけて破壊する機能を持っています。
[設問] 血管内から感染組織に浸潤してマクロファージに分化するのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 好中球 ロ 好酸球 ハ 好塩基球 ニ 単球
正解 (ニ)
[設問] ウイルスに感染した細胞やガン化した細胞を見つけて破壊する役割を持っているのはどれか? 一つ選べ。
イ 好中球 ロ B細胞 ハ T細胞 ニ NK細胞
正解 (ニ)
人体の構造と機能 第44回(血液・造血器の構造と機能) [人体の構造と機能]
8.血液・造血器の構造と機能
1)概念
・細胞が生命活動を維持するための ①栄養素、酸素、ホルモン、老廃物、二酸化炭素などの移送 ②臓器の代謝で生じる熱の運搬と放散 ③体液の量とpHの恒常性の維持 ④生体防御 ⑤血液凝固・線溶系の働き などを行うのが血液・造血器の役割です。
2)血液成分の構造と機能
(1)赤血球
《構造》
A)赤血球の形と大きさ
・赤血球は、直径7~8μm、厚さ2μmで、中央がへこんだ円盤状の形をしています。
B)赤血球数・ヘマトクリット値・ヘモグロビン量
・赤血球の数は、450万~550万/mm3くらいです。
・ヘマトクリット値は、血液中に占める赤血球の容積で、基準値は男性では40~48%、女性では34~42%です。
・赤血球は成熟したものは核がなく、細胞形質膜だけでなる細胞で、内にヘモグロビンを包含しています。ヘモグロビンは鉄を含んだヘム色素とグロビンという蛋白が結合したもので、血液が赤く見えるのは、このヘム色素のためです。赤血球中に含まれるヘモグロビンの量は、男性で13.7~17.4g/dL、女性では11.3~14.9g/dLです。
《機能と生理》
A)赤血球の役割
・赤血球は、肺で取り込まれた酸素を全身の組織に運び、そこで二酸化炭素を受け取り、肺に運んで排出させるガスの運び屋としての機能を持っています。
B)酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビン
・赤血球中のヘモグロビンは、酸素と結合する前は還元ヘモグロビン、結合後は酸化ヘモグロビンと呼ばれます。
・酸化ヘモグロビンの酸素の末梢組織での放出は、2通りある。末梢組織から赤血球中に入った二酸化炭素と酸化ヘモグロビンの酸素が入れ替わって酸素が末梢組織中に放出されるのがひとつ。もうひとつは、赤血球内に入った二酸化炭素が水に溶け水素イオンを遊離して、これが酸化ヘモグロビンを還元ヘモグロビンに変えて酸素を放出させるものです。いずれにしても、二酸化炭素の存在が酸素の放出には必要というわけです。
人体の構造と機能 第55回(泌尿器系の構造と機能)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-03-14
人体の構造と機能 第43回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
C)ガス交換
・肺胞は毛細血管で取り囲まれていて、呼吸膜を介して、吸気によって赤血球のヘモグロビンから二酸化炭素を受け取り、酸素を渡すことになります。つまり、二酸化炭素と酸素を交換するわけです。
・呼吸膜をはさんで、酸素と二酸化炭素は濃度の高い方から低い方へ移行します。この移行の仕方を拡散と呼びます。
・肺胞から毛細血管に移動した酸素の99%はヘモグロビンに結合し、1%は血漿に溶け込みます。
・肺動脈の赤血球中のヘモグロビンは還元ヘモグロビンで、ガス交換によって酸素をもらって肺静脈では酸化ヘモグロビンに変わります。
補)肺胞と血液の間で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換を外呼吸(がいこきゅう)と言い、血液と他器官の細胞とのガス交換、細胞内のミトコンドリアで行われる酸素の利用と二酸化炭素の産生を内呼吸(ないこきゅう)と言います。
・ガス分圧というのは、混合気体の中で1つの気体が示す圧のことです。
・肺胞の酸素分圧は100mmHg、二酸化炭素分圧は40mmHgで、ガス交換前の肺動脈の酸素分圧は約40mmHg、二酸化炭素分圧は45mmHg、ガス交換後の肺静脈の酸素分圧は約95mmHg、二酸化炭素分圧は約40mmHgとなります。
[設問] 次の説明文で正しいものを一つ選べ。
イ 肺胞の呼吸膜をはさんで酸素と二酸化炭素が移行するのは、拡散による。
ロ 肺胞から毛細血管に移動した酸素の約50%はヘモグロビンに結合し、残りの50%は血漿に溶け込む。
ハ 肺胞と血液の間で行われる酸素と二酸化炭素の交換を内呼吸という。
ニ 肺動脈の赤血球中のヘモグロビンは酸化ヘモグロビンで、ガス交換によって酸素をもらって肺静脈では還元ヘモ
グロビンに変わる。
正解 (イ)
以上で呼吸器系は終了です。次回からは血液・造血器に入ります。
人体の構造と機能 第42回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)呼吸運動
・呼吸運動は、肋間筋(ろっかんきん)と横隔膜(おうかくまく)の収縮と弛緩でおき、吸息運動(きゅうそくうんどう)と呼息運動(こそくうんどう)からなっています。
・肋間筋を使って行う呼吸を胸式呼吸(きょうしきこきゅう)、横隔膜を使って行う呼吸を腹式呼吸(ふくしきこきゅう)と言います。
・安静時に1回の呼吸で呼出または吸入される空気量を1回換気量といい、約450mLになります。
・深呼吸では、1回換気量より約2500mL多く空気を吸入できます。これを予備吸気量と言い、予備吸気量+1回換気量=最大吸気量で示されます。
・呼気でも安静時呼気後にさらに約1000mLの空気を吐き出すことができます。これを予備呼気量と呼び、それでも吐き出すことのできない空気の量を残気量(ざんきりょう)と言います。残気量は約1100mLです。
・予備呼気量+残気量は機能的残気量と言い、肺活量+残気量を全排気量と言います。
・1秒間に出す最大呼気量(%)も肺機能の指標となります。これは、時間肺活量または1秒間の努力呼気肺活量(1秒量)と呼ばれます。肺活量との比(%)は1秒率と言います。
・死腔量とは、ガス交換に関与しない空気量で、気道の容積を解剖学的死腔、交換されないガスの量を生理学的死腔と言います。健康人では、この二つは一致します。
B)呼吸運動の調節
・呼吸運動の中枢は延髄にあり、そこが周期的な呼吸運動を行わせています。
・呼吸は、化学的受容器を介した酸素と二酸化炭素の濃度などに対応して変化します。化学受容器には中枢性と末梢性のものがあります。
・中枢性の化学受容器は、延髄の呼吸中枢近傍にあり、脳脊髄液と脳組織液のpHに反応し、pHが下がると換気速度は増加し、上がると換気速度は減少します。
・末梢性の化学受容器は、頸動脈にある頸動脈小体と大動脈にある大動脈体にあり、血中の酸素濃度の低下、二酸化炭素濃度の増加、pHの低下に反応して呼吸を促進しています。
人体の構造と機能 第41回(呼吸器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
E)肺の分葉
・肺は、右肺が3つ(上葉、中葉、下葉)に左肺が2つ(上葉、下葉)に分かれています。
F)肺門(はいもん)
・肺に気管支、肺動脈、肺静脈が出入りする箇所を肺門と言います。
G)胸膜腔(きょうまくくう)
・肺は、肺胸膜(臓側胸膜)と壁側(へきそく)胸膜の二重の漿膜に覆われていて、この間の空間が胸膜腔です。胸膜腔は大気圧より陰圧に保たれています。
H)肺胞(はいほう)
・肺は2~7億個の肺胞でできています。
・肺胞は、内腔側から、表面活性物質(サーファクタント)、内張被膜液(ないちょうひまくえき)、第I型細胞(扁平上皮細胞)でできています。
補)表面活性物質は、肺胞の萎縮を防いでいます。内張被膜液は、肺胞の表面積を減少させて、肺胞周囲の弾性線維とともに肺胞を小さくさせています。
[設問] 肺胞の萎縮を防いでいるのは、次のうちのどれか? 一つ選べ。
イ 表面活性物質(サーファクタント) ロ 内張被膜腋 ハ 第I型細胞 ニ 弾性線維
正解 (イ)