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疾病の成り立ちと回復の促進 第14回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

b)血管壁の機能異常や破綻による出血

・ 出血とは全血が血管外に出ることをいいます。

・ 出血の機序には、破綻によるもの(外傷、動脈瘤など)と漏出によるもの(出血性素因など)があります。

・ 出血の影響としては、大量の場合はショック、周辺臓器の圧迫、気管支内におこれば窒息の原因となります。

c)血管内腔の閉塞による病変

ア)血栓(血栓症)

・ 血栓(けっせん)とは血管内壁で血液成分が凝固したものです。

・ 血栓形成の誘因としては、血管壁の変化(動脈硬化による)、血液成分の変化(血小板などの凝固因子の増加、脱水による血液濃縮など)、血流速度の変化(血圧低下など)があります。

イ)塞栓(塞栓症)

・ 塞栓(そくせん)とは血流に乗って異物(生理的には血管内にないもの)が動いてある箇所で内腔を完全に塞いで血流を遮断したものをいいます。

・ 塞栓の原因となる異物を栓子(せんし)と呼び、栓子には血栓、脂肪滴、腫(しゅ)瘍塊(ようかい)、気泡などがあります。

塞栓.png

ウ)梗塞

・ 梗塞(こうそく)とは動脈内腔の完全な閉塞により灌流領域におこる乏血により組織壊死をおこしたものをいいます。

・ 原因としては塞栓、動脈硬化巣の血栓形成、血行力学的要因(血圧低下や血液の濃縮)があります。

・ 梗塞がゆっくりと進むと壊死には陥らず萎縮がおこります。
              例)動脈硬化性萎縮腎

・ 心臓や腎臓などのように動脈支配が一本の終動脈だと組織は貧血性梗塞(白色梗塞)となり、肺や肝臓などのように二重に血管支配がある臓器では閉塞のない血管からの血流による出血をおこし、出血性梗塞がおこります。


d)血液・リンパの還流の異常

ア)水腫(浮腫) 

・ 水腫(浮腫)(すいしゅ(ふしゅ))とは液状成分が間質の結合組織内や体腔内に過剰に蓄積した状態をいいます。

・ うっ血性水腫とは、静脈血の心臓への還流が悪く、全身の静脈圧が上昇、毛細血管内に血液が貯留し、血管壁の透過性が亢進して血液の液状成分が漏出しておこるものです。 心性水腫とも言われます。

うっ血性水腫.png

・ 腎性水腫とは腎機能低下のため血漿蛋白が尿中へ排泄され、血漿膠質浸透圧が低下し、血液の液状成分が血管外へ出ておこります。

・ 肝性水腫とは肝硬変などで門脈圧が上昇し、毛細血管圧が高くなって腹腔内に液状成分が漏出した(腹水)ものです。肝障害があるとアルブミン合成が低下しますので、低蛋白血症をきたし、血漿膠質浸透圧が低下することも原因となります。

・ 腔水症(くうすいしょう)とは体腔内への液状成分が貯留するものをいいます。 水頭症、胸水、腹水、関節水症、心嚢水腫、陰嚢水腫などがあります。

腔水症.png

・ 炎症性水腫とは炎症による毛細血管透過性の亢進のためおこるものをいいます。

・ 内分泌性水腫とは、甲状腺機能低下症や原発性アルドステロン症などによるものです。

・ 栄養障害性水腫とは、飢餓などによって蛋白質の摂取不足があって、おこるものです。

・ リンパ還流障害による水腫とは、悪性腫瘍や外科手術などによるリンパ管の閉塞によっておこるものです。

[設問] 血栓形成の誘因の組み合わせで正しいものはどれか? 一つ選べ。

イ 動脈硬化・血液希釈・血圧低下

ロ 動脈硬化・血液希釈・血圧上昇

ハ 動脈硬化・血液濃縮・血圧低下

ニ 動脈硬化・血液濃縮・血圧上昇        正解 (

[設問] 次の説明文で正しいものを一つ選べ。

イ 梗塞とは、動脈内腔の完全な閉塞により灌流領域におこる組織壊死をいう。

ロ 梗塞の原因は、塞栓と動脈硬化巣の血栓形成の二つだけである。

ハ 梗塞がゆっくり進むと、出血がおこる。

ニ 動脈支配が一本の終動脈だと組織には出血性梗塞がおこる。

                                正解 (

[設問] うっ血性水腫で血管外に出るのは次のうちどれか?

イ 赤血球   ロ 好中球   ハ 血小板    ニ リンパ球    ホ 水

                                正解 (

[設問] 腎性水腫の原因はどれか? 一つ選べ。

イ 毛細血管透過性の亢進

ロ 毛細血管圧の上昇

ハ 血漿膠質浸透圧の低下

ニ 静脈圧の上昇             正解 (


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疾病の成り立ちと回復の促進 第13回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

(4)循環障害

A)循環障害とは?

・ 循環障害とは、血管あるいは血流に異変がおこり、支配下の組織、臓器、器官に何らかの障害がおこるものをいいます。

・ その異変とは、血液の流れが過剰になったり減少したりすることです。

B)局所循環障害

a)血管内の血流の変化

ア)充血: 

・ 充血(じゅうけつ)とは小動脈、毛細血管に流入する動脈血の量が正常より増加した状態をいいます。(流入の過剰)

・ 充血の原因には、食後の消化管粘膜におこる機能的なもの(次図中段)や炎症で血管が拡張する炎症性充血(次図下段)などがあります。

・ 局所変化として、皮膚や粘膜は鮮紅色になり熱感を伴います。 機能的なものでは、静脈側からの血液の流出が機能しますが、炎症性のものでは、機能が不十分で4つの徴候(発赤(ほっせき)、熱感、腫脹、拍動痛)がみられます。

充血.png

イ)うっ血

・ うっ血とは静脈血の流出が妨げられて毛細血管や静脈内に血液がうっ滞した状態をいいます。(流出の停滞)

・ うっ血の原因には、心臓の機能低下、静脈内腔の狭窄・閉塞(静脈血栓、静脈炎などによる)、静脈圧迫(妊娠時の子宮、腹水、腫瘍などによる)があります。

・ 局所変化として、チアノーゼ(血液中の還元ヘモグロビンの増加により皮膚や粘膜が青紫色に見える現象)、冷感、膨隆(水腫)、硬結(こうけつ)がみられます。

うっ血.png

ウ)虚血

・ 虚血(きょけつ)とは組織や臓器に流入する動脈血量が減少した状態をいいます。

・ 虚血の原因は、動脈内腔の狭窄あるいは閉塞であり、動脈硬化、動脈炎、血栓形成、塞栓などによります。

・ 局所変化は、ゆっくりと虚血が進行する場合には副血行路(ふくけっこうろ)の形成がおこり、急に完全な虚血がおこった場合は組織の壊死がおこります。 虚血が一過性の血管壁の収縮によるものであれば、完全な回復もおこりえます。

虚血1.png
虚血2.png

[設問] 炎症性充血が機能性充血と異なる点は次のうちどれか? 一つ選べ

イ 動脈血の流入量の増加

ロ 静脈血の流出量の低下

ハ 動脈血の流入量の減少

ニ 静脈血の流出量の増加                  正解 (

[設問] うっ血について述べたのは、次のうちどれか? 

イ 拍動痛がみられる。

ロ チアノーゼがみられる。

ハ 発赤、熱感がみられる。

ニ 動脈血の流入量の増加がみられる。       正解 (

[設問] 虚血がゆっくりと進行した時にみられるものはどれか? 一つ選べ。

イ チアノーゼ

ロ 壊死

ハ 出血

ニ 副血行路                正解 (


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